
「まず管理職になる」ためのステップを。USENが求めはじめた新たな仕組み
店舗・施設向け音楽配信を基盤に、通信、POSレジ、防犯カメラ、デジタルサイネージ、業務用ロボットと事業を拡大。さらに店舗開業支援にも力を入れ、音楽だけでなく、通信インフラ、運営サポートまでワンストップで提供する株式会社USEN(U-NEXT.HD)様では、5ヶ月間で管理職に必要なベースとなる要素を座学と疑似体験を交えながら学ぶ独自の研修育成プログラム「Management Base Program」において、弊社マネジメントベースをご導入いただきました。
株式会社USEN
営業企画統括部 ゼネラルマネージャー 兼 営業推進部 部長 大田 勇樹 様
営業企画統括部 営業推進部 シニアマネージャー 兼 営業推進課 課長 宮澤 雄太 様
営業企画統括部 営業推進部 営業推進課 係長 小林 聖佳 様
営業企画統括部 営業推進部 営業推進課 主任 山口 雪乃 様
管理職をどう育てるか?USENが直面した人材育成の空白地帯
マネジメントベース編集部(以下、編集部):
管理職、マネジメント教育に関するこれまでの取り組みを教えてください。
宮澤様:
昨年から新任管理職者に対してマネジメントの概要を学ぶ研修を取り入れました。
しかし、まだ「管理職を目指す人」に向けた研修は実施できておらず、今回が初めての取り組みとなります。
大田様:
USENはもともと店舗向け音楽配信事業一本でスタートして、そこからカメラやレジなど商材が増えていきました。
当時は新サービスが出ると商材担当者が全国の拠点を回って社員向けに商材に関する研修をしていたのですが、商材知識が全国の営業社員に浸透するまでに、サービスのリリースから2か月くらいのラグがありました。その課題を解消するためにオンライン動画のプラットフォームなどを導入し、新卒や若手社員への商材知識のインプットを充実させてきました。
また、人事としても入社1年目から5年目までの階層別研修を用意しており、過去には5年目研修で琵琶湖の保養所を研修場所として利用して、役員によるの講話会や、新規事業を考えるプログラムなどを実施していました。
一方で、若手社員の育成プログラムは整えてきたものの、管理職を育成する仕組みは不足していました。
弊社では若い社員が管理職に登用されるケースも多いので、本人の心構えがまだできていないまま役職を担う状況も見受けられました。
早期に管理職として抜擢されることは良いことではありますが、就任後に学ぶ機会も限られているため、プレイヤー意識が抜けないまま、管理職を務めるケースも散見されました。まさに「そもそも、マネジメントってどうやるんだっけ?」という状態です。
「まず管理職になる」ためのステップを。USENが求めはじめた新たな仕組み
編集部:
今回のManagement Base Programを行うことに至った背景や目的を教えてください。
大田様:
これまでも新任管理職者を対象にした研修機会はありました。
社長室の主導で、期初にその年に管理職になった人を集めて、「管理職とは」という説明をします。
ただ、内容はハラスメント防止の話や、「あなたはこれまで1部署の1メンバーだったけれども、これからはもっと広い視点で周りを見ていこう」「他部署はこういうことをやっているんだよ」といったものが中心でした。
これまで管理職として必要なスキルを体系的に学べる場はなかったこともあり、管理職を目指す意欲あるメンバーを選定の上、「人」「組織」「業務」のマネジメントを中心に、
管理職に必要なベースとなる要素を座学と疑似体験を交えながら学ぶ研修育成プログラムとして「Management Base Program」を企画しました。
編集部:
ちなみに、多くの会社では管理職になったあとに研修を受けるのが一般的ですが、御社はその前段階で研修を取り入れていますよね。
その「手前でやる」意義やポイントについて、改めてお聞かせいただけますか?
大田様:
昇格前に必要なスキルやマインドを身につけてもらうことで、本人にとっては管理職になる事前準備ができ、周囲にとっては「自発的に研修を受けていることで昇格に納得できる」という状態を生み出せます。
また、以前より「Mコース」という経営幹部養成プログラムは存在していました。
これは数年周期で実施されていましたが、経営幹部を輩出していくものであったため、もっと手前、つまり「管理職になる」ためのプログラムがあってもいいのではないか、という考えから、今回の研修を設計したという経緯があります。
管理職候補を対象に、公募から選抜して実施
編集部:
どのような方を対象にManagement Base Programを実施したのでしょうか?
宮澤様:
今回は「管理職になる前の方」を公募・選抜して実施しました。
我々の管掌範囲である支社やエンタープライズ事業部、営業企画統括部という部門の営業・内務を対象にしています。
USENでは組織での役割を示す役職で「Job Title」というものがあり、本プログラムでは「主任」「係長」が該当しています。
加えて、「Job Title」とは別に「Job Name」という個人の仕事内容を示す役名もあり「サブリーダー」「リーダー」「マネージャー」といった方もいます。
今回は、そのような「リーダークラス」の社員の中で「管理職を目指したい」という意欲を持つメンバーを対象に募集しました。
方法は公募で、約50名の応募がありました。
書類選考の後、応募社員には所属長(事業部長クラス)との面談を行っていただき、書類選考では伝わりにくい、「なぜ管理職になりたいのか」「なぜ今回の研修に応募したのか」「今後どのようなキャリアを歩んでいきたいのか」といった要素を所属長に見極めてもらいました。
そうしたプロセスを経て、最終的に今回の研修対象として24名を選出しました。
体験が学びを変える。USENが重視した“リアルさ”と納得感
編集部:
マネジメントベースをご導入いただいた決め手を教えてください。
小林様:
座学や講義形式だけでは、まだ管理職を経験していない人にとってはイメージが湧きにくいんこともあります。その点、体験しながら学べるボードゲームはイメージを持ちやすい。そこが良いと思ったポイントです。
もともと体験会にも参加して内容を把握していたので、導入もしやすかったですね。
マネジメント力といっても「組織」「人」「業務」といったようにジャンル分けされているのがすごく良いと思いました。
もし自分が受講者だった場合、テーマが分けられている方が理解しやすいと思います。
最後にはすべてがつながっていると分かる点も含めて、ゲームとしても非常に分かりやすく、講義の内容ともきちんと噛み合っていました。
USENとNEXERAが連携し、一体感あるプログラム設計を実現
編集部:
マネジメントベースを実施に導入してみて良かった点を教えてください。
宮澤様:
最初に講義を受けて、その後すぐにボードゲームで実践する流れだったのですが、「あ、こういうことなんだ」と体感を通じて理解が深まる点がとても良かったです。
同じ講義を受けても、ゲームになると最終的な成果は人によって全然違う。サイコロなど運の要素もありますが、それ以上に考え方の違いが大きく出ます。
「なぜこの人をここに配置したのか」という判断に、それぞれのスタイルが表れるんです。
例えば、最初から人を育成しようとする人もいれば、組織を中心に考える人もいる。
逆に「ここは自分(マネージャー)が業務に入ろう」と割り切る人もいて、本当に千差万別で、そうした違いを同じグループの中で共有できるのは、とても良い取り組みだと思いました。
1つ工夫したのは、講義内容が「USENの言葉」として、実際の社内の用語、ケーススタディや業務などに置き換えて伝えていったことです。
そのままでは受講者自らが自分ごとに置き換える必要があるので、我々の言葉で補足したり、社内として特に大事にしてほしいことを加えたりしました。
そうすることで「USEN独自のプログラム」にできたと思っています。
大田様:
座学だけでは実感が得にくい。でもボードゲームなら「部下は言った通りに動かない」「組織全体を考える必要がある」といったジレンマを体験できます。
御社の強みはそこだと思いますし、我々はさらにリアルに感じてもらうために、長期間かけて現場で考えさせる課題を組み合わせました。
管理職に必要な要素や考えは、たった一度の研修を受講して身に付くものではないと考えていたため、月に1回のペースで、なるべく長期間にわたって「管理職になるためにはどうすればいいか」を考えてもらいたいという想いで「Management Base Program」を設計していました。
小林様:
また、USENの研修とNEXERA様の研修が独立して、バラバラに見えないようにも工夫しました。
単発の研修の連続ではなく、全体が一つにつながっているような形で一貫性を持たせたい。
その点についても、適宜ミーティングを行い、しっかりとすり合わせられたのは本当に良かったですし、とてもありがたく感じています。
山口様:
今回の研修を通じて「管理職とは何か」を改めて考えるきっかけになったと考えています。
これまで漠然としていた「いつか管理職になりたい」という思いや、自分なりにイメージしていたマネジメント像が、講義やゲームを通じて言語化され、それが自分の中に定着していったと感じています。言語化によって意識が高まり、日々の行動にも変化が表れてきました。
また、課題に取り組んだことも大きく影響しており、これまで以上に管理職として幅広い視点を持つことができるようになった実感があります。今回の研修を通して、多角的な視野を育てることができたのは大きな成果だと思います。
今後のNEXERAに期待すること
編集部:
今後のNEXERAに期待することを教えてください。
宮澤様:
カスタマイズの部分ですが、御社のプログラム自体が体系的にしっかりしているので、それをベースに個社ごとのカスタマイズができるのは非常に良いと思っています。
例えば我々の場合だと、営業職向けに「USENの言葉」を取り入れたボードゲームをつくれたら良いなと考えています。
また、営業職だけでなく内務職になるとマネジメントの方法も少し変わってくると思いますので、その職種に合わせた講義やボードゲームがあるとより効果的だと思います。
そういう意味で、この“カスタマイズ性”には今後も大きな期待を持っています。
大田様:
今回、USENは営業会社の側面が大きいこともあり、参加者の9割は営業職でした。
そのため、最初に出されたタスクについては「少しイメージしにくい」という声もありました。
「マニュアル作成なんてやったことがないんですけど…」という受講者もいたくらいです。
そのあたりをもっと営業に即した形でカスタマイズできたら良いなと思います。
「営業ボードゲーム」のようなコンテンツがあれば、ぜひやってみたいですね。
特に新入社員などにとっては、非常に効果的なのではないかと感じています。
今後の管理職・マネジメント層に向けた取り組みについて
編集部:
今後の管理職・マネジメント層に向けた取り組みを教えてください。
小林様:
今回うれしいことに応募が多く、受講者を選考する形になりました。
周りからの評判もよかったため、来年以降もぜひ続けていきたいと考えています。
ただ、管理職については「なったあと」がやはり大変だと思っています。
今回の受講者全員がすぐに全員管理職になるわけではありませんし、数年後に昇格したときに今回の学びを忘れてしまう可能性もあります。
そのため、継続的にサポートしながら、管理職になったあとの研修も手厚くしていきたいと考えています。
今回の研修で、キーワードのようになっていたのが「自分らしい管理職」です。
「管理職とはこうあるべきだ」と型にはめるのではなく、「自分だからこそできるマネジメント」を見つけてほしいと思っています。